様々な脳領域

○人前でのスピーチ中の脳活動(PET)

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☆Tillfors, M., Furmark, T., Marteinsdottir, I., Fischer, H., Pissiota, A., Långström, B., Fredrikson, M.(2001). Cerebral blood flow in subjects with social phobia during stressful speaking tasks: a PET study. American Journal of Psychiatry, 158(8), 1220-1226.

☆概要

人前でのスピーチに対する不安の有無で、社会不安障害者と健常者の神経活動が異なるかどうかをPETで調べた。

実験:6〜8人の聴衆の前でスピーチをする条件(ビデオに記録)と一人でスピーチをする条件(記録なし)を設けた。どちらも2分30秒のスピーチだった。題材は実験者が20分前に指定した(ex.旅行・休暇)。すべて開眼状態で行った。放射性同位体(酸素15)で標識した水によるPETで、スピーチ中の脳活動を測定した。心拍数もスキャン中に記録した。その他、状態不安、恐怖、苦痛をスキャン後に評定させた。

その結果、社会不安であるか否かに関わらず、心拍数は一人でスピーチをするよりも人前でスピーチをする方が高かった。社会不安障害者は一人でのスピーチより人前でのスピーチの方が状態不安、恐怖、苦痛が有意に大きく、健常者は有意ではなかった。人前でのスピーチ条件では、社会不安障害者の方が健常者よりも心拍数、状態不安、恐怖、苦痛が高かった。一人でのスピーチ条件では、社会不安障害者の方が大きかったのは心拍数と状態不安だけだった。

PETで、スピーチ条件による脳活動の変動を社会不安障害者と健常者で比較した。その結果、患者の方が有意に局所脳血流量の増加が認められたのは右扁桃複合体だった。逆に、患者で減少し、健常者で増加したのは両側島皮質・右側頭極・眼窩前頭前野だった。また、健常者と比較しで、患者の血流量の増加が少なかった領域は右頭頂葉・右二次視覚野だった。健常者で血流の増加があったが、患者でなかった部位は両側鼻周囲皮質・両側脳梁膨大後皮質だった。

☆コメント

社会不安障害者の局所脳血流量をスピーチ中に検査したことがこの研究の特徴です。スピーチにも「一人条件」と「聴衆条件」の二つを設定し、スピーチ条件の違いが脳血流量に与える影響を分析しています。

筆者は今回の研究から、人前でのスピーチにおいて社会不安障害者は皮質下の領域が、健常者は皮質の活動が高まると結論付けています。この違いが不安症状が発現するか否かに関係すると考えているようです。

ただ、社会不安障害者の方が平均35.2歳と健常者の22.5歳よりも高くなっています。この年齢の差が結果に影響した可能性があります。また、聴衆の前でスピーチをした条件でのみ、不安を高めるため、その模様をビデオに記録しています。このことが、参加者の脳活動に何らかの影響を与えた恐れもあります。

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