様々な脳領域

○人前でのスピーチに対する不安(fMRI)

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☆Lorberbaum, J. P., Kose, S., Johnson, M. R., Arana, G. W., Sullivan, L. K., Hamner, M. B., Ballenger, J. C., Lydiard, R. B., Brodrick, P. S., Bohning, D. E., George, M. S.(2004). Neural correlates of speech anticipatory anxiety in generalized social phobia. Neuroreport, 15(18), 2701-2705.

☆概要

社会不安障害者の扁桃体は活動性が高いという点で先行研究は一致している。しかし、前頭前野の活動性については、高いとの報告もあれば、低いとの報告もある。そこで、人前でのスピーチに対する不安について、前頭前野から脳幹までの活性をBOLD-fMRIで調べた。

実験参加者は全て男性。8名の全般性社会不安障害者の内、1名が幼児期に場面緘黙症だった。5名は回避性人格障害も合併していた。

fMRI実験:参加者には即興で、4人の聞き手に対するスピーチをさせた。実験サイクルはリラクゼーションで安静(1分:閉眼)→12秒→予期:スピーチの指示(1分:閉眼)→12秒→スピーチ(1分:開眼)→スピーチ後(スピーチの出来を考えさせる:閉眼)。

なお、スキャン後に4つの段階それぞれにおける不安を評定させた。

その結果、スキャン後の評定で、安静でも患者の方が健常者よりも不安が有意に高かった。予期や「予期ー安静」得点では、患者の方が有意に高い不安を感じていた。患者では予期の方が安静より有意に不安が高かったが、健常者では有意差がなかった。

fMRIで、患者の方が高い「予期ー不安」活性を示した脳部位は、辺縁系(扁桃体・鉤・海馬傍回)、外側傍辺縁帯(島皮質・側頭極)・脳幹(橋前部)、線条体(腹側被殻・淡蒼球)だった。一方、活性が低かったのは背側前帯状皮質・背側前頭前野だった。

☆コメント

辺縁系や外側傍辺縁帯、橋や線条体は自動的な感情に、背側前帯状回や前頭前野はその感情を評価し、より理性的な判断を下す脳領域です。著者は、実験結果から全般性社会不安障害者は感情的応答をする(不安)傾向が高いが、理性的判断をする傾向は低いと論じています。

ただ、この実験では「予期ー安静」の活性を指標としています。著者も述べているように、安静時に背側前帯状回や背側前頭前野の活性が高いと、それだけ見かけ上、「予期ー安静」活性が低下することになります。特に、安静時に患者と健常者の間で、脳活性が異なる可能性もあり、結果の解釈に注意が必要です。

今回のサンプルが男性だけだというのも気になる点です。また、基本は閉眼状態で、スピーチの時は開眼状態で実験を行っています。閉眼か開眼かといった要因の影響が脳活性に与える影響も考慮する必要があります。さらに、8名の社会不安障害者の内、回避性人格障害を合併しているのが5名というのも気になります。およそ半数以上が合併症を持っていることになり、サンプルに歪みが出ています。

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