様々な脳領域

○脳の萎縮

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☆Irle, E., Ruhleder, M., Lange, C., Seidler-Brandler, U., Salzer, S., Dechent, P., Weniger, G., Leibing, E., Leichsenring, F.(2010). Reduced amygdalar and hippocampal size in adults with generalized social phobia. Journal of Psychiatry and Neuroscience, 35(2), 126-131.

☆概要

PTSD(心的外傷後ストレス障害や大うつ病で、扁桃体や海馬の委縮が示されている。しかし、社会不安障害に関して、脳容量の変化を調べた研究はない。そこで、全般性社会不安障害者の扁桃体や海馬の大きさを調べた。

3T-MRIを用い、脳容量を計測した。

その結果、全般性社会不安障害者の扁桃体は約13%、海馬は約8%、萎縮していた。しかし、扁桃体の有意な委縮は男性の患者だけに認められた。一方、海馬の委縮度に関する左右の大脳半球の非対称性は、男性より女性の方が大きかった。右海馬が萎縮しているほど、社会不安の強さ(Liebowitz Social anxiety scaleで評価)が高かった。また、右扁桃体が萎縮しているほど、状態不安が強かった(State Trait Anxiety Inventoryで評価)。

☆コメント

著者は、扁桃体や海馬が萎縮していると考えられるPTSDや大うつ病の患者を除外しています。したがって、これらの疾患のために、今回の研究結果が歪められたとは考えられません。

回避性人格障害を合併している患者(7人)には、合併していない患者(17人)と比較して、有意な脳の萎縮は認められませんでした。この研究では回避性人格障害を合併している方が、社会不安の期間が長く、不安や回避の傾向(Liebowitz Social anxiety scaleやSocial Phobia and Anxiety Inventoryで評価)も高くなっています。したがって、重篤または長期的な社会不安の結果として、右扁桃体が萎縮する程度は小さいかもしれません。ただ、右扁桃体や右海馬の委縮度が症状の大きさと関係しているという結果はこの考えと矛盾しています。回避性人格障害を主診断とする患者の脳容量を調べる必要があります。

この研究では、扁桃体や海馬が萎縮しているのに、総脳容量には患者と健常者で有意な差はありませんでした。もしかしたら、扁桃体や海馬とは逆に大きくなっている脳部位があるのかもしれません。

著者も述べているように、このような萎縮が後天的要因(ストレスなど)によるものなのか、先天的要因(遺伝など)によるのかは分かりません。ただ、どちらの要因でも、それを支持する先行研究はあります。

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緘黙症
社会不安障害

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